児童相談所は勝手に110番できる?阿部監督の報道で注目された通報基準や損害賠償の例を調査

読売巨人軍の阿部慎之助監督をめぐる報道で、「児童相談所が警察に110番通報した」という点に注目が集まっています。

テレビ朝日の報道では、18歳の娘から「親から虐待された。父親から暴行を受けた」などの相談を受けた児童相談所から、警視庁に110番通報があったとされています。さらに、捜査関係者の話として「殴られた。首を絞められた」といった相談内容も報じられています。
引用元:テレビ朝日「【情報まとめ】読売巨人軍の阿部慎之助監督が辞任 娘への暴行疑いで会見」

一方で、会見では娘の手紙も読み上げられ、「警察が来ていちばん驚いているのは自分自身」といった内容も伝えられました。そのため、ネット上では「児童相談所は本人や家族の意思と関係なく、勝手に110番できるの?」と疑問に思った人も多いようです。

結論からいうと、児童相談所は相談内容から子どもの安全確保が必要だと判断した場合、警察へ通報・連携することがあります。こども家庭庁も、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について、虐待かもと思ったときに児童相談所へ通告・相談できる全国共通の電話番号だと説明しています。
引用元:こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル『189』について」

また、厚生労働省の資料では、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案や、子どもの安全確認ができない事案などについて、児童相談所と警察の情報共有を徹底する方針が示されています。
引用元:厚生労働省「児童虐待防止対策におけるルールの徹底について」

この記事でわかること
  • 児童相談所は勝手に110番できるのか
  • 児童相談所が警察へ通報する基準
  • 189に相談すると必ず警察に通報されるのか
  • 児童相談所を名誉毀損や損害賠償で訴えられるのか
  • 児童相談所の対応をめぐる過去の損害賠償事例

この記事では、阿部監督の報道で注目された「児童相談所が勝手に110番」という疑問について、児童相談所の通報基準や189相談との違い、さらに損害賠償で争われた過去の例まで整理します。

スポンサーリンク
目次

阿部監督の件で注目された「児童相談所が勝手に110番」とは?

今回の報道で特に注目されたのが、児童相談所から警視庁へ110番通報があったという点です。

テレビ朝日の報道によると、阿部慎之助監督は、東京・渋谷区の自宅で18歳の娘に暴行を加えた疑いで現行犯逮捕され、その後釈放されました。

同報道では、18歳の娘から「親から虐待された。父親から暴行を受けた」などの相談を受けた児童相談所から、警視庁に110番通報があったとされています。捜査関係者の話として、「殴られた。首を絞められた」といった相談内容も伝えられています。
引用元:テレビ朝日「【情報まとめ】読売巨人軍の阿部慎之助監督が辞任 娘への暴行疑いで会見」

娘本人は「警察が来て驚いた」と手紙で説明

一方で、会見では娘の手紙も読み上げられました。

テレビ朝日の別記事では、娘の手紙として、ChatGPTに相談した結果、匿名で相談できる児童相談所を知って電話したこと、児童相談所の職員に相談したものの、自分の意向が聞かれることなく警察に通報される形になったことなどが紹介されています。

また、手紙の中では「警察が来て一番驚いているのは自分自身」といった内容や、父とはすでに仲直りしているという説明も伝えられています。
引用元:テレビ朝日「18歳娘からの手紙も…阿部氏が涙の巨人軍監督辞任」

この部分だけを見ると、娘本人は「警察を呼んでほしい」と明確に求めたわけではなく、相談先として児童相談所に連絡した可能性があります。

そのため、ネット上では「児童相談所は本人の意思を確認せずに110番できるのか」「相談だけのつもりでも警察が来ることがあるのか」という疑問が広がりました。

「勝手に通報された」と感じる人が出た理由

今回の件で「勝手に110番」という言葉が出ているのは、相談した側の受け止めと、児童相談所側の判断にズレがあったように見えるためです。

相談した本人や家族からすれば、「まずは相談したかっただけ」「警察沙汰にするつもりではなかった」と感じることがあります。

しかし、児童相談所は、相談者の希望だけで動く機関ではありません。相談内容から子どもの安全確認が必要だと判断した場合、警察や関係機関と連携することがあります。

特に、相談内容に「暴行を受けた」「首を絞められた」といった身体への危険を示す内容が含まれていた場合、児童相談所側が緊急性のある事案として受け止める可能性があります。

つまり、今回の報道で注目されたポイントは、児童相談所が本当に“勝手に”通報したのかというより、相談者が警察対応を望んでいなくても、児童相談所が必要と判断すれば110番通報につながることがあるのかという点です。

次の章では、児童相談所が実際に警察へ通報・連携することがあるのかを整理します。

児童相談所は勝手に110番できる?

結論からいうと、児童相談所は必要と判断すれば、警察へ通報・連携することがあります。

ただし、ここでいう「勝手に」という表現には注意が必要です。

児童相談所は、相談者の希望をそのまま代行するだけの機関ではありません。相談内容から、子どもの安全確認や保護が必要だと判断した場合、警察などの関係機関と連携して対応することがあります。

こども家庭庁は、児童相談所について、こどもの福祉に関する相談を受け、必要な調査や援助を行う専門機関と説明しています。また、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」は、虐待かもしれないと思ったときに児童相談所へ通告・相談できる全国共通の電話番号です。
引用元:こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル『189』について」

児童相談所の役割は子どもの安全確認を優先すること

児童相談所が最優先するのは、相談した人の希望どおりに対応することではなく、子どもの安全を確認することです。

たとえば、相談者が「大ごとにはしたくない」と思っていたとしても、相談内容に暴力や虐待の疑いが含まれていれば、児童相談所側は「子どもの身体に危険があるかもしれない」と判断することがあります。

厚生労働省の資料でも、児童虐待への対応では、子どもの安全確保を最優先に、児童相談所・市町村・警察など関係機関が連携することが重要とされています。
引用元:厚生労働省「児童虐待防止対策におけるルールの徹底について」

そのため、相談者本人が「警察を呼んでください」と言っていなくても、児童相談所が危険性や緊急性を感じた場合には、警察への通報や情報共有につながることがあります。

相談者や家族の希望だけで通報の有無が決まるわけではない

児童相談所への相談では、相談者の話を聞くことは当然重要です。

しかし、虐待や暴力が疑われる場面では、相談者本人があとから「大丈夫です」「通報しなくていいです」と話したとしても、それだけで対応を止められるとは限りません。

家庭内の問題では、子どもが親をかばったり、怖くなって被害を小さく話したりすることもあります。そのため、児童相談所は相談者の希望だけでなく、話の内容、危険性、緊急性、子どもの安全確認ができるかどうかなどを総合的に見て判断します。

今回の阿部監督の件でも、報道では「父親から暴行を受けた」「殴られた。首を絞められた」といった相談内容があったとされています。こうした内容が児童相談所に伝わっていた場合、児童相談所側が警察への通報が必要だと判断しても、不自然とは言い切れません。
引用元:テレビ朝日「【情報まとめ】読売巨人軍の阿部慎之助監督が辞任 娘への暴行疑いで会見」

「勝手に110番」ではなく「安全確保のための通報」と見る必要がある

相談した本人や家族からすると、警察が来た時点で「勝手に通報された」と感じることはあるかもしれません。

しかし、児童相談所の立場から見ると、警察への通報は、相談者を困らせるためではなく、子どもの安全を確認するための対応です。

特に、身体への暴力や命に関わる危険が疑われる場合、児童相談所だけで現場の安全を確認することが難しいケースもあります。そのような場合には、警察と連携して対応することがあります。

つまり、児童相談所は本人や家族の同意がなければ絶対に警察へ通報できない、という仕組みではありません。

相談内容から子どもの安全確保が必要だと判断されれば、相談者の想定を超えて警察対応につながることがあります。

児童相談所は何を基準に警察へ通報する?

児童相談所が警察へ通報・連携するかどうかは、相談者が「警察を呼んでほしい」と言ったかどうかだけで決まるわけではありません。

大きな判断材料になるのは、相談内容から子どもの生命や身体に危険があると考えられるか、そして児童相談所だけで安全確認ができるかという点です。

厚生労働省の資料では、児童相談所と警察の情報共有を強化する対象として、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案や、48時間以内に子どもの安全確認ができない事案などが挙げられています。
引用元:厚生労働省「児童虐待防止対策におけるルールの徹底について」

虐待による外傷・ネグレクト・性的虐待の疑いがある場合

児童相談所が警察と情報共有する対象として、まず挙げられているのが、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案です。

外傷とは、暴力によるけがやあざなどが疑われるケースです。ネグレクトは、食事を与えない、必要な医療を受けさせない、著しく不衛生な環境に置くなど、子どもの安全や健康が脅かされる状態を指します。

また、性的虐待が疑われる場合も、児童相談所だけで抱えるのではなく、警察との連携対象になります。

文部科学省の「児童虐待への対応のポイント」でも、明らかな外傷があり身体的虐待が疑われる場合、生命・身体の安全に関わるネグレクトが疑われる場合、性的虐待が疑われる場合などは、児童相談所に連絡するケースとして整理されています。さらに、子どもの生命・身体への危険性や緊急性が高いと考えられる場合には、警察にも連絡するよう示されています。
引用元:文部科学省「児童虐待への対応のポイント」

今回の阿部監督の件でも、報道では「父親から暴行を受けた」「殴られた。首を絞められた」といった相談内容があったとされています。

こうした内容が児童相談所に伝わっていた場合、児童相談所側が身体への危険がある可能性を考え、警察への通報が必要だと判断することはあり得ます。
引用元:テレビ朝日「【情報まとめ】読売巨人軍の阿部慎之助監督が辞任 娘への暴行疑いで会見」

子どもの安全確認ができない場合

もう一つ大きな基準になるのが、子どもの安全確認ができるかどうかです。

厚生労働省の資料では、虐待通告を受けたあと、原則として48時間以内に、児童相談所や関係機関が直接子どもの様子を確認するなどして、安全確認を行う全国ルールが示されています。

さらに、子どもと面会できず、安全確認ができない場合には、立入調査を実施し、必要に応じて警察への援助要請を行うことも示されています。
引用元:厚生労働省「児童虐待防止対策におけるルールの徹底について」

つまり、児童相談所が相談を受けても、電話だけで「大丈夫そう」と判断するのではなく、必要に応じて実際に子どもの安全を確認することが求められています。

その安全確認ができない場合や、家庭内で危険が続いている可能性がある場合には、警察との連携が検討されます。

緊急性が高い場合は48時間を待たずに対応することもある

「48時間以内に安全確認」と聞くと、児童相談所が必ず48時間待つように感じるかもしれません。

しかし、これは「48時間以内なら急がなくてよい」という意味ではありません。子どもの生命や身体に危険があると考えられる場合は、より早く対応する必要があります。

厚生労働省の「児童虐待への対応における警察との連携の強化について」では、児童虐待対応について、児童相談所や市町村が関係機関と緊密に連携し、子どもの安全確保を最優先に行うことが重要だとされています。
引用元:厚生労働省「児童虐待への対応における警察との連携の強化について」

そのため、相談内容に「首を絞められた」「激しい暴力を受けた」「今も危険な場所にいる」といった緊急性を感じる内容があれば、児童相談所が早い段階で警察へ通報・連携することがあります。

今回の件でも、実際に児童相談所がどのような内部判断をしたかは公表されていません。ただし、報道されている相談内容を見る限り、児童相談所側が緊急性を考えた可能性はあります。

児童相談所と警察の連携は近年強化されている

児童相談所と警察の連携は、近年強化されています。

こども家庭庁の資料では、警察庁の通達を踏まえ、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案や、48時間以内に安全確認ができない事案などについて、児童相談所・市町村と警察の間で情報共有を行うことが示されています。
引用元:こども家庭庁「警察との実質的な情報共有による連携の強化について」

背景には、家庭内の虐待は外から見えにくく、子ども本人が被害を小さく話したり、親をかばったりするケースがあることも関係しています。

そのため、児童相談所が「相談者が警察を希望していないから通報しない」と単純に判断するのではなく、子どもの安全を最優先に、警察と情報共有する仕組みが整えられています。

児童相談所の通報基準は、相談者にとってはわかりにくい部分もあります。しかし、公的資料を見ると、判断の中心にあるのは「子どもの安全をすぐ確認する必要があるか」という点です。

189に相談すると必ず警察に通報される?

児童相談所に相談すると、必ず警察に通報されるわけではありません。

ただし、相談内容から子どもの安全確保が必要だと判断された場合には、児童相談所が警察や市区町村などの関係機関と連携することがあります。

つまり、「189に電話したら必ず110番される」わけではないものの、内容によっては警察対応につながることがあるという整理になります。

189は児童相談所につながる虐待対応ダイヤル

189は、児童相談所虐待対応ダイヤルの番号です。

こども家庭庁は、189について、虐待かもしれないと思ったときなどに、近くの児童相談所へ通告・相談できる全国共通の電話番号だと説明しています。
引用元:こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル『189』について」

189は、子ども本人だけでなく、近所の人、学校関係者、親族など、虐待かもしれないと感じた人が相談・通告できる窓口です。

たとえば、次のような場合に利用されることがあります。

  • 子どもの泣き声や怒鳴り声が長時間続いている
  • 子どもに不自然なあざやけががある
  • 子どもが家に帰りたがらない
  • 食事や身なりなど、生活面で放置されているように見える
  • 子ども本人が家庭内の暴力やつらさを相談したい

189は「警察を呼ぶための番号」というより、まず児童相談所につながり、子どもや家庭の状況を相談・通告するための窓口です。

相談や通告は匿名でもできる

こども家庭庁の説明では、189への相談・通告は匿名でも可能とされています。

また、通告・相談した人や、その内容に関する秘密は守られると説明されています。
引用元:こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル『189』について」

そのため、「近所の家庭が心配だけど、自分が通報したと知られたくない」「子ども本人が名前を出さずに相談したい」という場合でも、相談しやすい仕組みになっています。

ただし、匿名で相談できることと、児童相談所が何も動かないことは別です。

相談内容から子どもの安全に関わる可能性があると判断されれば、児童相談所が必要な調査や安全確認を進めることがあります。

内容によっては警察や関係機関と共有されることがある

189に相談した内容が、すべて警察に通報されるわけではありません。

しかし、暴力による外傷、ネグレクト、性的虐待の疑い、子どもの安全確認ができない場合などは、警察との情報共有や連携につながることがあります。

厚生労働省の通知では、児童虐待への対応において、児童相談所・市町村・警察などの関係機関が緊密に連携し、子どもの安全確保を最優先に行うことが重要だとされています。
引用元:厚生労働省「児童虐待への対応における警察との連携の強化について」

つまり、相談者が「警察までは望んでいない」と思っていても、児童相談所側が危険性や緊急性を感じれば、関係機関と共有される場合があります。

今回の阿部監督の件でも、報道では、娘が児童相談所に連絡した後、児童相談所から警視庁へ110番通報があったとされています。
引用元:テレビ朝日「【情報まとめ】読売巨人軍の阿部慎之助監督が辞任 娘への暴行疑いで会見」

このため、189は匿名で相談できる窓口ではありますが、相談内容が深刻な場合には、児童相談所だけで完結せず、警察対応につながる可能性があります。

110番と189の違いを整理

110番と189は、どちらも子どもの安全に関係する場面で使われることがありますが、役割は異なります。

番号つながる先主な目的
110番警察事件・事故・身の危険など、緊急対応が必要なとき
189児童相談所虐待かもしれないと思ったときの通告・相談
0120-189-783児童相談所相談専用ダイヤル子育てや親子関係など、子どもに関する相談

すぐに身の危険がある場合や、暴力が今まさに起きている場合は、110番が優先されます。

一方で、虐待かもしれない、子どもの様子が心配、家庭内のことで相談したいという場合は、189が窓口になります。

ただし、189に入った相談でも、内容によっては児童相談所が警察へ通報・連携することがあります。

そのため、189は「警察に通報されない相談窓口」ではなく、「子どもの安全を守るために必要な対応につなげる窓口」と考えるとわかりやすいです。

児童相談所を名誉毀損で訴えることはできる?

児童相談所に通報された側が「勝手に110番された」「社会的評価が下がった」と感じた場合、名誉毀損で訴えることはできるのでしょうか。

結論からいうと、訴えること自体は可能ですが、児童相談所の110番通報そのものを名誉毀損として争うのはハードルが高いと考えられます。

理由は、名誉毀損では一般的に「公然と事実を示して、人の社会的評価を下げたか」が問題になるためです。刑法230条では、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者について定められています。
引用元:e-Gov法令検索「刑法」

一方で、児童相談所が警察へ通報する行為は、不特定多数に情報を広めるものではなく、子どもの安全確認のために関係機関へ連絡する行為です。

そのため、「通報された結果、報道されて社会的評価が下がった」と感じたとしても、児童相談所の通報行為そのものが、直ちに名誉毀損になるとは考えにくいです。

警察への通報は不特定多数への公表ではない

名誉毀損で問題になるのは、基本的に不特定または多数の人が知ることができる状態で、社会的評価を下げる事実を示したかどうかです。

しかし、児童相談所から警察への通報は、一般向けに発表する行為ではありません。

児童相談所が「虐待の疑いがある」「子どもの安全確認が必要」と判断し、警察に連携することは、児童虐待対応の一部として行われるものです。

厚生労働省の通知でも、児童虐待への対応では、児童相談所・市町村・警察などが緊密に連携し、子どもの安全確保を最優先に行うことが重要とされています。
引用元:厚生労働省「児童虐待への対応における警察との連携の強化について」

そのため、児童相談所の通報が「関係機関への連絡」の範囲にとどまる場合、名誉毀損としては争いにくいと考えられます。

争うなら名誉毀損より国家賠償の問題になりやすい

もし児童相談所の対応に問題があったとして争う場合、名誉毀損よりも、国家賠償の問題として検討される可能性があります。

国家賠償法1条では、国や公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、職務上、故意または過失によって違法に他人へ損害を加えた場合、国や公共団体が賠償責任を負うと定められています。
引用元:e-Gov法令検索「国家賠償法」

つまり、児童相談所の対応について損害賠償を求める場合は、「通報によって名誉を傷つけられた」というより、児童相談所の判断や対応に違法性があったかどうかが問題になりやすいです。

ただし、児童相談所が相談内容から子どもの安全確保が必要だと判断した場合、その通報や連携が違法と認められるハードルは高いと考えられます。

特に、相談内容に暴力や身体への危険を示す内容が含まれていた場合、児童相談所側は「子どもの安全確認のために必要な対応だった」と説明しやすくなります。

SNSで家族や娘を責める投稿の方が名誉毀損リスクがある

今回のような報道では、児童相談所の通報そのものよりも、SNSや掲示板での書き込みの方が名誉毀損リスクを生みやすいです。

たとえば、事実確認が不十分なまま、次のような内容を断定的に投稿するのは危険です。

  • 「娘が父親を陥れた」
  • 「児童相談所が嘘を広めた」
  • 「阿部氏は虐待常習者だ」
  • 「家族が大げさにした」
  • 「通報した側が悪い」

こうした投稿は、不特定多数が見られる場で、特定の人物や家族の社会的評価を下げる内容になり得ます。

報道されている内容を超えて、家族関係や相談内容を決めつけることは避ける必要があります。

今回の件についても、報道で確認できるのは、児童相談所から警視庁へ110番通報があったこと、阿部氏が暴行容疑で現行犯逮捕され、その後釈放されたこと、会見で娘の手紙が読み上げられたことなどです。
引用元:テレビ朝日「【情報まとめ】読売巨人軍の阿部慎之助監督が辞任 娘への暴行疑いで会見」

そのため、記事やSNSで扱う場合は、児童相談所の通報を一方的に「違法」「やりすぎ」と断定するのではなく、子どもの安全確保を目的とした対応だった可能性を踏まえて整理することが大切です。

児童相談所の対応で損害賠償を求めた過去の例

児童相談所の110番通報をめぐって、「もし通報が行きすぎだった場合、損害賠償を求めることはできるのか」と気になる人もいるかもしれません。

確認できる範囲では、今回のように「児童相談所が警察に110番通報したこと自体」を直接争った有名な裁判例は多くありません。

ただし、近い事例として、虐待を疑った通告、児童相談所による一時保護、面会制限などをめぐって、保護者側が損害賠償を求めた例はあります。

ここでは、今回の記事と関連しやすい過去例を整理します。

医療機関が虐待を疑って児童相談所に通告した事例

まず参考になるのが、医療機関が児童虐待を疑って児童相談所に通告し、保護者側から損害賠償を求められた事例です。

医療判例解説では、児童虐待を疑って児童相談所に通告した医療機関に対し、児童の保護者が損害賠償請求をした事例が紹介されています。

この事例では、裁判所は一審・高裁ともに、医療機関の対応に違法性はないと判断したとされています。
引用元:Medical Online「児童虐待を疑った通告者の責任」

この事例で重要なのは、虐待通告は「虐待が確定してから行うもの」ではなく、「虐待が疑われる段階」で行われるものだという点です。

あとから見て、虐待ではなかった可能性が出てきたとしても、その時点で合理的に虐待を疑う事情があれば、通告したこと自体が直ちに違法になるとは限りません。

今回のテーマに置き換えると、児童相談所が警察に連絡した場合でも、通報時点で「子どもの安全確認が必要」と判断できる事情があったかどうかが重要になります。

児童相談所の一時保護をめぐる国家賠償訴訟

次に、児童相談所の一時保護をめぐって、保護者側が損害賠償を求めた例もあります。

横浜市の公表資料では、国の医療機関からの通報により、児童相談所が児童虐待と判断して一時保護した児童が一時保護中に死亡し、その両親が横浜市と国側に損害賠償を求めた訴訟が紹介されています。

この訴訟では、両親が横浜市に対し、一時保護決定および再一時保護決定による精神的苦痛、死亡による損害、弁護士費用などを請求したとされています。
引用元:横浜市「一時保護中に死亡した児童に関する損害賠償請求訴訟の判決について」

この事例は、警察への110番通報そのものを争ったものではありません。

しかし、児童相談所の判断によって家庭から子どもが一時的に離され、その対応が原因で損害が生じたとして争われた例として、今回のテーマに近い部分があります。

児童相談所の対応をめぐる損害賠償では、単に「納得できない」「大ごとになった」というだけではなく、児童相談所の判断や対応に法的な違法性があったかどうかが問題になります。

面会制限など一部対応が違法とされた例もある

児童相談所側の対応が、裁判で一部違法と判断された例もあります。

たとえば、大阪地裁令和4年3月24日判決では、児童相談所による一時保護や面会制限をめぐる国家賠償請求が問題になりました。

こども家庭庁の資料では、この裁判例について、児童相談所長が行った一時保護や面会通信制限に関する国家賠償請求において、一部の対応が国家賠償法上違法とされた事例として紹介されています。
引用元:こども家庭庁「令和7年児童福祉法等改正の施行に向けた検討について」

また、弁護士による解説では、大阪地裁令和4年3月24日判決について、1か月を超えて一時保護を継続したことと、その間の面会制限が違法と判断されたと紹介されています。
引用元:船倉総合法律事務所「児童相談所による一時保護・面会制限の違法性」

このように、児童相談所の対応であっても、すべてが無条件に正当化されるわけではありません。

一時保護の必要性がなくなった後も長く保護を続けた場合や、十分な根拠なく親子の面会を制限した場合などは、国家賠償の対象として争われることがあります。

通報そのものと、その後の対応は分けて考える必要がある

損害賠償の例を見ると、重要なのは「通報したこと」「その後の対応」を分けて考えることです。

虐待が疑われる段階で、医療機関や児童相談所が関係機関へ通告・連携すること自体は、子どもの安全確保のために必要とされる場面があります。

一方で、通告や通報の後に、必要性を欠いた一時保護が続いたり、根拠の乏しい面会制限が長期化したりすれば、その対応の違法性が争われることがあります。

今回の阿部監督の件でいえば、報道上確認できるのは、児童相談所から警視庁へ110番通報があったという点です。

その通報自体を違法とするには、通報時点で児童相談所がどのような情報を把握していたのか、緊急性をどう判断したのか、子どもの安全確認が必要だったのかといった事情が重要になります。

過去の例から見ると、児童相談所の対応で損害賠償が争われることはあります。ただし、子どもの安全確保のために合理的な疑いをもとに通報・連携した場合、その通報自体が違法と認められるハードルは高いと考えられます。

今回の件で損害賠償が認められる可能性はある?

今回のように、児童相談所から警察へ110番通報があり、その結果として逮捕や報道につながった場合、「損害賠償を求めることはできるのか」と気になる人もいるかもしれません。

結論からいうと、訴えること自体は可能でも、児童相談所の通報そのものについて損害賠償が認められるハードルは高いと考えられます。

国家賠償法では、公務員が職務上、故意または過失によって違法に他人へ損害を加えた場合、国や公共団体が賠償責任を負うと定められています。
引用元:e-Gov法令検索「国家賠償法」

つまり、児童相談所の対応で損害賠償を求める場合は、単に「通報された」「大ごとになった」というだけではなく、児童相談所の判断や対応に違法性があったかどうかが問題になります。

「通報されたこと」だけで違法とされる可能性は高くない

児童相談所が警察へ通報したこと自体を違法とするには、通報時点で児童相談所が把握していた情報をもとに、警察への連絡が不必要だったと言えるかが重要になります。

しかし、児童虐待対応では、子どもの安全確保が最優先とされています。

厚生労働省の通知でも、児童相談所や市町村、警察などが緊密に連携し、子どもの安全確保を最優先に行うことが重要だとされています。
引用元:厚生労働省「児童虐待への対応における警察との連携の強化について」

そのため、児童相談所が相談内容から「子どもの身体に危険があるかもしれない」と判断し、警察に通報した場合、その判断が直ちに違法とされる可能性は高くないと考えられます。

特に、虐待対応では、あとから見て結果的に大きな被害がなかったとしても、通報時点で危険性を疑う事情があったかどうかが重視されます。

相談内容に身体への危険が含まれる場合は通報が正当化されやすい

今回の阿部監督の件では、報道によると、娘から「親から虐待された。父親から暴行を受けた」などの相談を受けた児童相談所から、警視庁へ110番通報があったとされています。

また、捜査関係者の話として、「殴られた。首を絞められた」といった相談内容も報じられています。
引用元:テレビ朝日「【情報まとめ】読売巨人軍の阿部慎之助監督が辞任 娘への暴行疑いで会見」

このような内容が児童相談所に伝わっていた場合、児童相談所側は、単なる親子げんかではなく、身体への危険がある可能性として受け止めたと考えられます。

特に「首を絞められた」という相談内容は、けがの有無にかかわらず、生命や身体への危険を疑いやすい内容です。

そのため、児童相談所がその時点で警察への通報が必要だと判断したとしても、子どもの安全確保を目的とした対応として正当化されやすいと考えられます。

もちろん、実際に児童相談所がどのような会話を聞き、どのような内部判断をしたのかは、報道だけではわかりません。

ただ、報道されている相談内容を前提にすると、児童相談所の通報が明らかに不合理だったと判断される可能性は高くないとみられます。

ただし通報後の対応に問題があれば争われる余地はある

一方で、児童相談所の対応がすべて無条件に正当化されるわけではありません。

過去には、児童相談所による一時保護や面会制限などをめぐって、対応の一部が違法と判断された例もあります。

こども家庭庁の資料では、大阪地裁令和4年3月24日判決について、一時保護や面会通信制限に関する国家賠償請求の中で、一部の対応が国家賠償法上違法とされた事例として紹介されています。
引用元:こども家庭庁「令和7年児童福祉法等改正の施行に向けた検討について」

つまり、児童相談所が最初に通報・連携したこと自体は合理的でも、その後の一時保護、面会制限、調査対応などに問題があれば、別の争点として損害賠償が争われる余地はあります。

今回の件でいえば、報道上確認できる中心は、児童相談所から警察への110番通報です。

そのため、損害賠償の可能性を考える場合も、まずは通報時点で児童相談所がどのような情報を把握していたのか通報の必要性があったのかその後の対応に不適切な点があったのかを分けて見る必要があります。

最終的には個別事情と証拠によって判断される

損害賠償が認められるかどうかは、最終的には個別事情と証拠によって判断されます。

たとえば、次のような点が問題になります。

  • 児童相談所にどのような相談内容が伝えられていたのか
  • 身体への危険や緊急性を疑う事情があったのか
  • 児童相談所が安全確認のために警察通報を選んだことに合理性があったのか
  • 通報後の対応に過剰・不適切な点があったのか
  • 実際にどのような損害が発生したのか

今回のようなケースでは、本人や家族が「勝手に通報された」と感じたとしても、児童相談所側に子どもの安全確保という目的があり、相談内容から緊急性を疑う事情があった場合、通報自体の違法性を認めさせるのは簡単ではありません。

そのため、記事としては、「損害賠償で訴えることは可能だが、通報そのものが違法と認められるハードルは高い」と整理するのが現実的です。

「児童相談所が勝手に110番」はやりすぎだったのか

今回の報道を見て、「児童相談所の対応はやりすぎだったのでは?」と感じた人もいるかもしれません。

ただし、報道だけで児童相談所の対応を「やりすぎ」「違法」と断定するのは慎重になる必要があります。

児童相談所がどのような内容を聞き取り、どの時点で危険性を判断し、なぜ110番通報を選んだのかは、外部からはすべて確認できないためです。

そのうえで、公的資料や過去の事例を見ると、児童相談所は相談者本人の希望だけでなく、子どもの安全確保を最優先に判断する機関だと整理できます。

児相側は子どもの安全確保を最優先に動く

児童相談所の対応を考えるうえで重要なのは、児童相談所が「家庭内トラブルの仲裁役」ではなく、子どもの安全を確認し、必要な支援や保護につなげる機関だという点です。

こども家庭庁は、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」について、虐待かもしれないと思ったときに、児童相談所へ通告・相談できる全国共通の電話番号だと説明しています。
引用元:こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル『189』について」

また、厚生労働省の通知でも、児童虐待への対応では、児童相談所・市町村・警察などが連携し、子どもの安全確保を最優先に行うことが重要とされています。
引用元:厚生労働省「児童虐待への対応における警察との連携の強化について」

そのため、相談者が「警察までは望んでいない」と感じていたとしても、児童相談所側が危険性や緊急性を感じれば、警察へ通報・連携することがあります。

これは相談者の気持ちを無視するというより、子どもの命や身体を守るために、児童相談所が独自に判断しなければならない場面があるということです。

家族側の受け止めと児相側の判断はズレることがある

今回の報道では、娘の手紙として「警察が来て一番驚いているのは自分自身」といった内容も伝えられました。

テレビ朝日の報道では、娘がChatGPTに相談し、匿名で相談できる児童相談所を知って電話したこと、児童相談所に相談したところ、警察への通報につながったことなどが紹介されています。
引用元:テレビ朝日「18歳娘からの手紙も…阿部氏が涙の巨人軍監督辞任」

この流れを見ると、相談した本人や家族側からは「相談だけのつもりだった」「ここまで大ごとになるとは思っていなかった」と受け止められた可能性があります。

一方で、児童相談所側は、相談者の気持ちだけでなく、相談内容の危険性や緊急性を見て判断します。

特に、報道されているように「暴行を受けた」「殴られた」「首を絞められた」といった内容が含まれていた場合、児童相談所側が警察対応を選んでも不自然とは言い切れません。

つまり、同じ出来事でも、家族側から見れば「勝手に通報された」と感じられ、児童相談所側から見れば「安全確認のために必要な通報だった」と判断されることがあります。

あとから大ごとに見えても、その時点の情報で判断される

児童相談所の対応を考えるときは、あとから見た結果だけで判断しないことも大切です。

たとえば、あとから「けがはなかった」「家族で仲直りした」「本人は警察を呼ぶつもりではなかった」とわかったとしても、通報時点では別の判断が必要だった可能性があります。

児童虐待対応では、あとから結果的に深刻な被害が確認されなかったとしても、その時点で子どもの生命や身体への危険を疑う事情があれば、安全確認を優先することがあります。

特に家庭内の問題は、外部から実態を把握しにくく、子ども本人があとから親をかばったり、被害を小さく話したりすることもあります。

そのため、児童相談所は「本人が大丈夫と言っているから大丈夫」と単純に判断するのではなく、通告内容や状況をもとにリスクを見て対応します。

今回の件でも、実際に児童相談所がどのような情報をもとに110番通報したのかは、報道だけではすべてわかりません。

そのため、外部から「やりすぎだった」と断定するよりも、児童相談所は通報時点の情報をもとに、安全確保を優先した可能性があると見るのが現実的です。

憶測で家族や関係者を責めるのは避けるべき

今回のような家族間の出来事は、外部からは見えない事情が多くあります。

報道で確認できる事実と、SNS上の憶測は分けて考える必要があります。

特に、娘や家族に対して「大げさにした」「父親を陥れた」「児童相談所が悪い」といった断定的な言葉を向けるのは避けるべきです。

また、児童相談所の対応についても、報道だけで内部判断のすべてがわかるわけではありません。

児童相談所の通報が適切だったかどうかは、相談内容、緊急性、安全確認の必要性、通報後の対応などを総合的に見て判断されるものです。

今回の件で大切なのは、「勝手に110番された」という印象だけで児童相談所や家族を責めることではなく、児童相談所が警察へ通報する仕組みや基準を正しく理解することです。

まとめ

阿部慎之助監督をめぐる報道では、児童相談所から警視庁へ110番通報があったことが注目されました。

この流れを見て、「児童相談所は本人や家族の意思と関係なく、勝手に110番できるの?」と疑問に思った人も多いかもしれません。

結論として、児童相談所は、相談内容から子どもの安全確保が必要だと判断した場合、警察へ通報・連携することがあります。

特に、暴力による外傷、ネグレクト、性的虐待の疑い、子どもの安全確認ができない場合、生命や身体への危険が疑われる場合などは、警察との連携につながる可能性があります。

189に相談したからといって、必ず警察に通報されるわけではありません。ただし、189は「警察に通報されない相談窓口」ではなく、子どもの安全を守るために必要な対応につなげる窓口です。

また、児童相談所の110番通報を名誉毀損として争うのは、ハードルが高いと考えられます。警察への通報は、不特定多数への公表ではなく、関係機関への連携と見られやすいためです。

損害賠償についても、訴えること自体は可能ですが、通報時点で子どもの安全確認が必要と判断できる事情があった場合、通報そのものが違法と認められる可能性は高くありません。

一方で、児童相談所の対応がすべて無条件に正当化されるわけではありません。過去には、一時保護や面会制限などをめぐって、対応の一部が違法と判断された例もあります。

今回の件で大切なのは、「勝手に110番された」という印象だけで判断しないことです。

児童相談所の通報は、相談者や家族にとって想定外に感じられることがあります。しかし、児童相談所側は、通報時点で把握した情報をもとに、子どもの安全確保を最優先に判断します。

そのため、報道やSNSの情報だけで、児童相談所、阿部監督、家族の誰かを一方的に責めるのは避ける必要があります。

「児童相談所が勝手に110番できるのか」という疑問は、単に「できる・できない」で見るのではなく、子どもの安全確認が必要な場合には、警察と連携することがあると理解するのが正確です。

スポンサーリンク
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次